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ー塚本晋也監督「今まさにこの時代に必要な映画」ー クリエイターズトーク@シネマシティ シネマ・ワン kスタジオ イベントレポート
甚大なる被害を生んだ戦場のリアルを映し出した作風や、田丸と吉敷ら、過酷な環境下を生き抜く人物たちの物語が生々しく描かれる『ペリリュー -楽園のゲルニカ-』。
この度、1月10日(土)に、公開記念クリエイターズトークイベントvol.3<2026年新春戦争映画鼎談>を開催しました。
監督の久慈悟郎と原作・共同脚本を務めた武田一義のほか、第二次世界大戦末期、敗戦濃厚のフィリピン・レイテ島を生きる一人の兵士の姿を描いた映画『野火』にて、監督・主演を務めた塚本晋也がゲストとして登壇し、それぞれが一言挨拶した後、イベントがスタートしました。

まず初めのテーマは互いの作品への印象について。
『ペリリュー』を観ての感想を聞かれた塚本は、「『野火』との表現的な違いはあれど、テーマ性においては、違和感がなく共通部分がたくさんだなと感じました。『野火』では原作を読んだ際に、とても美しい自然に対して人間がなぜこんなに愚かなことをしているのかという対比を表現したい気持ちが強かったんですが、この『ペリリュー』でもそれを感じられましたし、今まさにこの時代に必要な映画だと思いました」と語り、「大抵の戦争作品はヒロイズムであったり、悲劇性が強くなっているものが多いかなと思うのですが、そういった要素を強調しすぎず、虚無的なまでに戦争の恐ろしさを描いていることが素晴らしいです」と絶賛。
それに対し、武田と久慈は『野火』に対して、「ペリリューの原作に取り掛かるまで、いろんな作品を鑑賞した際に、『野火』を観ました。まさに『ペリリュー』でやりたいのはまさにこういったことなんだと思ったことをよく覚えています。ヒロイズムや悲劇性を強調するのでなく、淡々と状況の恐ろしさを描写していくこと。そして観終わった後に、ズシンと心に何かが残っている。なので、私が原作を書くときも、常に『野火』が頭にありましたし、僕にとってはライバルであり、目標のような存在でしたね」(武田)、「僕も本作の仕事に取り掛かる前に、もちろん観ました。「二度と観たくない」と思える、ある意味、戦争映画の正解のような作品でしたね。僕も頭の中に『野火』があったのは事実です」(久慈)と、それぞれが思い思いに語り、塚本も喜ばしく安堵の表情を見せました。
そして武田から塚本へ、「そもそも『野火』を作りたいと思ったきっかけが何だったのか」と質問が飛び、塚本は「高校の時に小説を読んでから、ずっと作りたいと思っていて。予算面の兼ね合いや、いろいろ難しいことがありなかなか叶わなかったのですが、極小規模の制作でようやく始めれられたんです。戦後70周年の年で、戦争に関する法案などもいろいろ出てきていたときでしたし、そんな中で公開できたのはよかったです。」と答えるとともに、「逆に『ペリリュー』はどういった経緯で映画化に踏み切ったのか」と武田に逆質問。武田は「こちらも原作漫画が、ある程度の売れ行きが良かったとはいえ、いろんなリスクを背負いつつ、製作に踏み切っていただけました。作り手の意志や矜持に支えられていたのは、本当に事実です」としみじみと回顧していました。

続いてはそれぞれの作品を映画化するにあたっての注意した表現を聞かれ、塚本は「僕は原作の一兵士の目線を大切にし、ヒロイズムのようにはしないこと。そしてお客さんが戦場を体験しているかのような感覚を味わっていただきたかったので、主人公・田村一等兵の視点で描くことを大切にしていましたね」と回答すると、武田は史実に基づいた「ペリリュー島の戦い」を原作漫画化するにあたって、「漫画の場合は映画と違ってスパンが長いので、読者が途中で離脱せず読み続けてもらうために、だんだん読者に慣れていただくことを意識しましたね。序盤から全てをフルに表現せず、徐々にファンの皆様が戦争作品に適応いただくイメージを大切にしていました」と明かしました。
最後に久慈は、「主人公の田丸がどういった状況に置かれていたのかを調べることを大切にしていました。どうしてもメディアでしか戦争を知らない我々が戦争を伝えるということや、この物語がフィクションであるものの、こうした史実は実際にあったことをどう結びつけるのかということを大切にしていました」と振り返りました。
続いては、駆けつけたファンからの質問コーナーへ。
1つ目は、「(塚本の)代表作、『鉄男』(89)の制作時の気持ちや、そこから『野火』を作る際の想いの移り変わり」について。それに対し塚本は、「『鉄男』を作るときは、感じた衝動をそのまま表現することしかありませんでした。しかしこうしたバイオレンスや暴力描写は、時代の移り変わりで、見るのがつらいと感じてもらう暴力描写に変わっていきました。そういう状況で、ずっと作りたかった『野火』の製作に移りました。こうした戦争作品では、どうしても人間の暗部が浮き彫りになります。戦場から人が離れた時、人の明るい部分もたくさん見えてくるのに。『ペリリュー』でも、主人公・田丸が漫画家という夢を抱いていますよね。武田さんの思いや実感が田丸に反映されていたのがよかったです。そういうひとりひとりの夢や可能性が一瞬で潰されてしまうのが戦争です」と、自身の制作においての想いを打ち明けました。
2つ目は、「映画と原作における、各キャラクターの結末の違いについて」。それに対しては武田が、「原作未読の方が映画を観ていただくことも大切なので、多少の変更があったのは事実です。ただし、そんな中でも最も気をつけたことは、原作より悲惨な目には遭わないようにすることですね」と解説。加えて、「途中のパートですが、吉敷が劇中でシャボン玉をするシーンなんかは原作にはないのですが、彼の素朴な人間性がよく出ていますよね。素晴らしい表現だなと思っていました」と、作品を手がけた久慈に賛辞を送りました。
3つ目は、「1人1人の豊かなキャラクター設定について」。これにも武田は、「まさしく『ペリリュー』のテーマとして、戦場にもいろいろな人たちがいるということを描きたかったことがありました。元々自分は、戦場に赴かれた方を「日本兵」として勝手に1つに記号化していたところがあったので、当時戦場に行かれた方達のお話を聞いた時に、本当に皆さん、全く異なる気持ちやバックボーンを持たれていたことが衝撃だったんです。なので、自分の中で、イメージや想像をたくさん膨らませながら、1人1人のキャラクターを描いていましたね」と力強く語りました。

スペシャルゲストを招いた今回限りのトークイベントもいよいよ終盤へ。最後にそれぞれから駆けつけたファンに対して、締めの挨拶がされました。
「本日はお越しいただいて、作品をご鑑賞いただき、ありがとうございました。」(武田)、「本当に作品をご覧いただいて、ありがとうございました。今後も皆さんが戦争について考え語っていただく際に、この作品が残っていれば嬉しいです」(久慈)、「ちょうどこの立川シネマシティでは、10年間毎年終戦記念日あたりの時期に『野火』を公開してきてくださったんです。今のこの時代にこういった戦争映画はやっぱり必要だなと思っています。今後の終戦記念日には、この『ペリリュー』を上映していただけると嬉しいなと思いますね」(塚本)と語りかけ、会場から盛大な拍手が送られる中、イベントは幕を閉じました。
