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特別試写会・トークイベント@北広島市立東部中学校 イベントレポート
12月1日(月)に北広島市立東部中学校(北海道)にて本校中学生を対象に試写会とトークイベントを実施、原作・共同脚本を務めた北海道岩見沢市出身・武田一義が登壇しました。

北広島市は広島県東広島市と姉妹都市提携を結び、これまで児童・生徒の交流を通じて平和や戦争について学ぶ機会を重ねてきました。そうした背景の中、行われた本イベントは、鑑賞した生徒たちとの質疑応答を交えながら、作品制作の背景や取材の歩みを紹介する時間となりました。
本編上映後は、ウエルカムイラストを描いてくれた同校の生徒たちとの交流があり、涙を見せる生徒の姿も。
武田氏は生徒たちが作品に真摯に向き合ってくれたことに触れ、悲しみを伴う題材にもかかわらず最後まで受け止めてくれたことへの感謝を述べました。

武田は、戦争は日本が80年前に経験した出来事であり、自身も含め「戦争を知らない世代」であるという点を強調し、中学生の生徒たちと同じ立場から、どれだけリアルに描けるかを探り続けるため、現地調査や生還者への取材を重ねたことを話しました。
原作執筆を始めた10年前には、90歳を超えた生還者の話を聞くことができたが、この10年の間に多くの証言者が亡くなっていき、実際の感情に触れられなくなっていく現実に危機感を抱いているとも述べ、生還者の中には、聞き手の負担を少しでも軽くしようとユーモアを交えて語ってくれる人もいましたが、やはり戦友の話になると涙をこぼす人もおり、その姿が強く印象に残ったと説明しました。
また、そうした思いを代わりに表現することが、自身の作品づくりにつながっていくのではないかという考えを抱いているとも語ります。

キャラクターデザインについて、三頭身の柔らかい造形が採用された理由として、リアルなタッチでは恐怖が先に立ち、作品へ入りづらくなる可能性を避けたかったことを挙げました。
田丸や吉敷、島田、小杉といった主要キャラクターは初期段階からデザインが固まっていた一方、物語後半に登場するキャラクターは、これまでの作品にない顔を考え出しながら増やしていったことが明かされます。
作品における情報の扱いについて、田丸が戦死者の最期を脚色して遺族へ届ける「功績係」である点にふれながら、武田は情報に対する姿勢として「すべての情報は、もしかしたら嘘かもしれない」という意識を持つ重要性を示し、SNSや日々のニュースに触れる生徒たちにも通じる問題として、情報から一歩引く視点を大切にしてほしいと述べました。

質疑応答では、生徒たちから多くの質問が寄せられました。
田丸が戦後に漫画家になれたかという質問には、「原作では戦後の生活から老後まで描かれており、漫画家になっていることが紹介された。数ある戦地の中でペリリュー島を描いたきっかけについては、生還者への取材を続けてきた研究者から話を聞く機会があったことが大きな転機になったと」説明。思い入れのあるキャラクターについては田丸を挙げ、「自身を最も投影した存在」であると語りました。
また、田丸と吉敷の性格の対比については、当初から二人をセットで主人公と位置づけ、田丸を“見つめる側”、吉敷を“動く側”として物語を構成していたことが紹介されました。
イベントの終盤には、作品を観て抱いた悲しさやつらさをそのまま大事にしながら成長してほしいという武田からのメッセージも伝えられました。改めて家族や友人と劇場で観てもらいたいという言葉を添え、イベントは東部中学校の全校生徒387名の大きな拍手の中で締めくくられました。