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2026.02.18

ーシンエイ珠玉作品の制作秘話に迫ったー『ペリリュー ―楽園のゲルニカ―』×『トリツカレ男』 特別上映 イベントレポート

2025年11月7日に公開した『トリツカレ男』は、絵本のようにも見える街並みをはじめとした手書きの美しい映像とミュージカル調の演出、躍動感たっぷりのアニメーション表現や個性的なキャラクターが反響を呼んだ一作です。

また『ペリリュー -楽園のゲルニカ-』は2025年12月5日より劇場公開されると、アジア太平洋戦争激戦地ペリリュー島の戦いの史実に基づく凄惨で生々しい戦場描写、そこで紡ぎ出される戦火の友情物語に絶賛の声が相次ぎ、大きな反響に包まれています。

そんな両作のアニメ制作を手掛けたのは、「ドラえもん」をはじめとする藤子・F・不二雄作品や「クレヨンしんちゃん」など幼少期から慣れ親しんだアニメ制作で知られる人気スタジオ、シンエイ動画。

この度、2月16日に『ペリリュー -楽園のゲルニカ-』×『トリツカレ男』特別上映イベントが開催され、それぞれの上映に合わせ2度の舞台挨拶を実施しました。

1回目の舞台挨拶冒頭、MCより『トリツカレ男』の感想を聞かれた久慈は「アニメーションとしてやれることをフルにやっているなという印象」と語り、話題にもなった躍動感溢れるアニメーション表現にも触れながら「キャラクターと美術のデザインが最後まで一貫していて素晴らしい」と作品の統一感並びに制作スタッフ陣の熱量に敬意を示しました。

またお気に入りのシーンとして、キャラクター同士が窓越しで会話するシーンを挙げ、その際の窓の周りがイメージ画のようになる演出が、二人の心の近さを表しているアニメならではの表現として魅力的だったと語ります。

そういったアニメーションならではの工夫や原作をアニメに落とし込む際にこだわったポイントを問われた髙橋は、「原作の世界観が少しおとぎ話や舞台劇のようだったので、あえて大げさな表現や演劇的な体の動かし方を取り入れました。背景も『書き割り』のような舞台セット感を意識しました」と答え、絵本のような街並みと評されたアニメーションの裏側を語りました。

一方、久慈は「(ペリリューが)史実に基づいた作品ですので、当時のペリリュー島で戦った兵士達が何を使い、どんな兵器があったのかを徹底的に調べ克明に描写すること。観客がその戦場に一緒にいるような感覚になれるようこだわった」と答え、まるで自身が戦場にいるかのようなイマーシブな視聴体験と反響を呼ぶ本作の理由を明かしました。

 

1回目の舞台挨拶終盤のクロストークでは、久慈から髙橋へキャラクターデザインの質問が寄せられました。

髙橋は「『トリツカレ男』はビジュアルが非常に特徴的ですが、美術とキャラクターの調和をどうコントロールしたのですか?」という久慈の問いに対して「キャラクターデザインの荒川眞嗣さんの力が大きい」と答え、「リアリティがありつつも突き抜けたデザイン性が必要でした。荒川さんは『風人物語』などを手掛けられた方で、非常に作家性が高い。背景との統一感も、荒川さんが主要なシーンのイメージボードを描いてくれました。一番最初にパイロットフィルムを作れたことも良かったです、」とデザインの方向性決定にはキャラクターデザインを務めた荒川眞嗣の影響が大きいと述べつつ、原画の方々も最近にはない個性的なデザインで描くのが楽しいと喜んでいたというスタッフの熱気が伝わる裏話を披露しました。

最後の挨拶では、髙橋が「戦争(ペリリュー)と愛(トリツカレ男)、両作の題材は違いますが、根っこの部分では『人の心』を描くという共通点がある二作」と語ると、久慈も大きくうなずき「両作も主流のデザインとは違う、アニメーションだからこそできる表現を追求した作品です」と作品に込めた想いがひしひしと伝わる回答で1回目の舞台挨拶は終了しました。

2回目の舞台挨拶では冒頭で髙橋が、「ペリリュー」の原作は映画化される前から知っていたが、映画化は大変な作業になると感じていたと述べた上で、実際に「ペリリュー」を視聴した感想を「面白さと同時に非常に悲しく、こんなに楽しんでいていいのだろうかと感じるほど感情を揺さぶられました」と語りました。

その髙橋の真っ直ぐな感想を受け久慈は、原作の”可愛らしいキャラクターデザインで戦争という題材を描く”という本作ならではの武器を映画ではさらに突き詰めたいと考えていたと語り、その上で基本は原作者の武田一義のデザインを活かしつつ、漫画的な表現をアニメーションとしてどう克服し、現実の戦場と繋げるかに注力したと答えました。

そうした現実の戦場に近いリアルを追い求める上で、徹底的な考証を行ったエピソードも披露。「実際にある場所や史実を題材にしているため、調べれば調べるほど情報が出てくるのが大変だった」と語りつつ、例えば原作に登場する戦闘機「コルセア」を調べたところ、実際には配備時期が遅く別の機体が飛んでいた可能性が高かったため、映画ではより史実に近いと考えられる形で描写したというこだわりぶりや、実際に戦争の痕跡が色濃く残るペリリュー島に足を運びロケハンをした経験を基に「手がかりなしでは移動できないほどデコボコした地形や狭い壕の雰囲気を、観客に体験してもらえるよう画面作りに反映させた」という凄惨な戦場のリアルを追い求める徹底的な姿勢に髙橋も深く感心していました。

 

舞台挨拶中盤では、「ペリリュー」が第55回ロッテルダム国際映画祭でその年の映画界で注目を集めるハイライト作品で構成される「Limelight」部門に正式出品された話題に。

実際に映画祭で舞台挨拶を行った久慈は日本の軍隊という特殊な文脈や現在の世界情勢など、海外でどう受け止められるかを不安に感じていたが、実際にQ&Aや作品をご覧になったお客さんの感想を聞いてみると、多くの人が主人公である田丸の気持ちに寄り添って観てくれていたと語り、「戦史としてではなく、一人の若者の物語として受け入れられたことが非常に嬉しかった」と安堵と喜びの表情を見せた。

続いて行われたお客さんからの質問コーナーでは、両作品に「上白石姉妹」が関わっている点(上白石萌音は『ペリリュー -楽園のゲルニカ-』の主題歌を担当、上白石萌歌は『トリツカレ男』ペチカ役を担当)に言及があり、それぞれの印象を問われました。

髙橋は「萌歌さんは最初にお会いした時、野生動物のような、生き物としての強いオーラを感じました。内面に情熱を秘めたペチカ役にぴったりだと思いました」と語り、久慈は「映画のラストで萌音さんの主題歌『奇跡のようなこと』が流れ、その素敵な歌声のお陰で救いの少ない物語において観客が少しだけ救われるような構造にできたと感じています」と二人揃って上白石姉妹持つパワーに感嘆したエピソードを披露しました。

最後の挨拶では、久慈が「ペリリュー」を「人の美しさ、醜さ、愚かさ、そして自然の美しさがすべて詰まった豊かな映画です。何かを持ち帰っていただければ幸いです」と語り、髙橋も「綺麗なものだけでなく、不格好なものも含めた『人の気持ち』が伝わればいいなと思って(『トリツカレ男』を)作ってきました。この2作品には似た部分があると感じています」と語り、両作の根底にある想いが同じであることを強調し、大盛況の中でイベントは終了しました。