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2025.11.24

ティーチイン試写会@T・ジョイ京都 イベントレポート

T・ジョイ京都にて『ペリリュー ―楽園のゲルニカ―』ティーチイン試写会を実施いたしました。
本試写会は「ペリリュー -楽園のゲルニカ-」も展示作品として扱われており今月 25 日まで開催中の「マンガと戦争展 2」を実施している、京都国際マンガミュージアムにお声がけいただいたことが発端で開催に至りました。「マンガと戦争展 2」の監修者である吉村和真(京都精華大学マンガ学部)と共に、本作の原作者であり、共同脚本を務める武田一義が登壇し、ティーチイン試写会を実施しました。

試写会前には武田が京都国際マンガミュージアムを訪問し、実際に「マンガと戦争展 2」を見学。戦争マンガをテーマごとに 4 象限で示す体験型の展示に触れ、武田と吉村教授の議論は弾みます。様々なベクトルを持った多様な「戦争マンガ」が存在している中で、『ペリリュー ー楽園のゲルニカー』が持つメッセージや本作だからこそ成しえる表現技法を語り合いました。


ティーチインイベントでは吉村教授からの問いかけに武田が答える形で進み、執筆にあたっての想いや苦労、漫画だからこそ可能になった表現、作品に込めた想いなど幅広く語る場となりました。武田自身が体験していない“戦争”という題材を描くにあたっての葛藤を尋ねられると、「戦争を体験したことのない自分自身が戦争について、そもそも描いて良いのかという葛藤はありました。そんな中で、様々な方が戦争という題材を描いてきた。脈々と描き続けてきた方々の存在が、自分の中では描くという方向に踏み切る大きな力になっていたと思います」と執筆に至るまでの心境を語りました。
過酷な戦場を三頭身の可愛らしいキャラクターで描いた原作漫画「ペリリュー ―楽園のゲルニカ―」。吉村教授より、本作の目の表現が特に素晴らしいと評され、特徴的な田丸の目のデザインについて聞かれると、「田丸の目のデザインはちょっとした感情の動きを表現することができると同時に、感情を出し過ぎないこともできるんです。この抑制された表現が辛い物語には適しているんです。表情が明確すぎない分、読者や鑑賞者の感情を田丸に投影することができるんだと気付きました」と印象的なキャラクターデザインについて語ると共に、「田丸の目は、ガラケー時代の不等号や記号で顔を表現する“顔文字”のようなイメージで生まれた表現方法なんです」と、キャラクターデザインの着想と一緒に語ります。


原作の漫画からアニメ映画化にあたって感じたことについては、「描いてきたキャラクターたちに声が付き、動きくことで、こんなにも生き生きするのかと驚き、別の命を授かったような感覚になりました」と率直な感想を述べます。田丸役の声優を務めた板垣李光人については「田丸役には板垣さんに担当していただくことを熱望していました。田丸役を演じてくれて本当にうれしかったですし、いざ演技を聞かせていただくと予想を超えてくるような部分がたくさんあって、本当に嬉しかったです」とキャスティングの裏話を話します。吉敷役の中村倫也については、「吉敷のかっこいいだけじゃない、責任感が強く頼りがいのある田舎の好青年というキャラクター性が自然に声の中に見え隠れして本当に驚きました」と話したほか、武田が中村と話をした際、中村の「インタビューで自分が言っていることが先生とほとんど同じで良かったです」という言葉に驚いたエピソードを披露。「事前に話し合わずともキャラクターの解釈が一致していることに驚きました」と微笑みながら話しました。全 11 巻からなる原作漫画をアニメ映画化する中でエピソードの取捨選択を迫られた際の難しさを問われると、「本当に難しかったです。この映画には原作の漫画があって、さらにその大元には史実があります。映画にするには短くせざるを得ないので、そのためには史実に一度立ち返ることから始めました。史実があって、映画の中で史実を忠実に見せることができるエピソードを選んでいく必要があったんです。制約があることは分かっていましたが、原作者としてはキャラクター数を減らしたくなかった。本作は史実に基づいた作品ですが、1 番描きたかったのは“戦場にいたのは今の若者と変わらないような普通の人たちだ”ということです。普通の人とは、”色んな違う人たち”のこと。色んな違う人たちがいて初めて、普通の人たちが戦場にいたと言えるんです。キャラクターを減らしていくと普通の人たち、色んな違う人たちが描けなくなってしまうので、キャラクターを残すというところにこだわりま
した」と、映画化にあたり共同脚本も務めた武田ならではの苦難とこだわりが垣間見えました。


ティーチイン試写会ということでお客様からの質問を受ける時間もあり、「漫画やアニメだからこそ戦争の悲惨さや残酷さを伝えやすいのではないか?」という質問に対して武田は、「描き手という大きな意志を持ったフィルターを通すことで、描き手の想いを絵に込めることができると思います。直接的に絵の中に感情を込めることができるのが漫画なのだと考えています」と、漫画家として漫画の持つ表現の力を熱く語りました。吉村教授も「3 頭身のキャラが(漫画の中で)見開き 2 ページを 1 コマに使うのは、密度が薄くなるのかなと思ったら、全く違和感がなく、引き算の美学と余韻があった」と評し、「アニメ化することで漫画の特徴もより際立ち、キャラクターが持つ感情や哀愁を感じることが出来て、本作が持つメッセージを受け取りやすくなった」と述べました。漫画家としてそして映画『ペリリュー ―楽園のゲルニカ―』の原作・共同脚本として、武田のこだわりや熱量がひしひしと感じられるティーチイン試写会となりました