NEWS
大学生と戦争について語りあうティーチイン試写会@茨城大学 イベントレポート
11月16日には水戸二連隊の跡地である茨城大学水戸キャンパスにて特別ティーチイン試写会を実施、板垣李光人と原作&共同脚本の武田一義が参加しました!

本イベントには、茨城大学の学生のほか、近隣の中学校や高校の学生などを含めて約400人が来場し、上映の前には茨城大学で水戸歩兵第二連隊や、大学周辺の戦跡について研究している、茨城歴史探求チームの学生3グループ6人が登壇し、研究発表を行いました。学長からは「本イベントへのたくさんのご協力に感謝します。ここで戦争が起きたということはどうしようもない事実ですが、その事実に対して今後どう立ち向かっていくかが大切だと思います。大学とは知を耕す場であると同時に未来を創る場でもあります。本日、中学高校大学生が集まって未来を創る場にできて本当によかった。このキャンパス以外にも、かつて戦跡だった場所が大学などといった学びの場所になっていることが多々あります。これからあなたたちは未来を創る立場として、今日感じたことを大切にしてほしいです。」というお言葉を頂きました。
発表終了後、上映を終えて行われたティーチインには、板垣李光人と武田一義が登壇。板垣・武田が登場すると、約400人の観客は盛大な拍手の音で迎えます。12月5日の劇場公開に先んじて、縁のある茨城大学の学生ら若い世代に作品が届いたことに板垣は「この大学はまさしく本作と縁の深い場所ということで、そんな場所で上映後にお話しさせていただけることを嬉しく思います。」と笑顔を浮かべました。

MCから「若い世代の皆さんにご覧いただき、どんなお気持ちですか。」と聞かれると、本作を通してペリリュー島の戦いについて知ったという板垣は、「我々の世代は戦争経験者からお話を伺う機会も少なくなって、学校によっても戦争教育にばらつきがあると感じます。戦争が教科書の中のもの、物語などのフィクションとして捉えている部分がどうしてもあります。」と率直な感想を述べながら「でも知ることから広がるものは大きいと思います。今日映画を観て初めてペリリュー島の出来事を知った方もいると思いますが、そこからどんどん自分の中の考え方を深めていただけたら嬉しいです。」と目を向ける事の大切さを説いていました。それは武田も同じ想い。「戦争を知らない点において、私はここにいる学生の皆さんと同じ立場です。父親ですら、戦後生まれ。自分も10年前の当時の天皇皇后両陛下(現在の上皇上皇后両陛下)の慰霊訪問で初めてペリリュー島の戦いを知りました。そこから実際に戦地に赴いた兵士の話を聞き、「今の自分たちと全く変わらない普通の人たちだったんだ。」と知り、それを描きたいと思ったのが本作が始まったきっかけです。自分で知り、考える。それが大事。その入り口が本作になってもらえたらと思います。」と期待を込めてお話しました。
武田による原作を読んだ印象について板垣は、画と内容のギャップを魅力に挙げた。「可愛らしい絵柄と内容の凄惨さと生々しい戦争の歴史。表情もデフォルメされていて、だからこそこちら側に想像の余地が生まれる。心情や置かれている状況で田丸均が何を考えているのか、想像ができる。読みやすいけれど現実を突きつけられる。そのギャップが魅力的だと思いました。」と語りました。また水戸二連隊の跡地である茨城大学水戸キャンパスを訪れたことに板垣は「実際にこの地に足を運んで、本作を届ける事が出来たことが嬉しいです。学生の皆さんを前にして、若い世代の方々が戦地に送られたという事実を感じて、改めて戦争の怖さと残酷さを感じました。」と思うところもある様子でした。「劇中でも『楽園のような場所』というセリフがありますが、実際に海は青くて緑も綺麗です。でも一歩足を踏み入れると兵士の方がいた洞窟があったり、戦車も当時のまま錆びた状態で山道に現れたり。」と情景を回想しながら「映像芝居と違ってアフレコ収録ではマイクとモニターに向かってイマジネーションを働かせないといけないけれど、島の風土、気温、風、全てを感じる事でイメージを補う事が出来ました。実際に戦闘があった島に行く事で、田丸均を演じる事の重さを感じました。」と貴重な経験と述べます。武田もまた漫画を描き始めてペリリュー島を訪問した。「現地の風土を知るという意味では私も板垣さんと同じ体験をしました。ペリリュー島の戦いについて日本とアメリカ双方の文献を読んだけれど、そこから抜け落ちているのは”島民たちの声”だと思います。現地取材をして良かったと思ったことは、島民に話を聞き、考えや当時の体験を知れたことです。もし今後パラオに旅行に行く人がいれば、きっと島民のみんなは日本人を温かく迎え入れてくれます。でも、島民のみんなが戦争によって大きな被害にあったという事実を、頭の端に置いておいて欲しいと思います。」と、ペリリュー島への想いを馳せました。
その後は上映前に発表を行った学生とのティーチインが行われました。
原作とともに共同脚本を務めた武田は、まず全11巻+外伝4巻という膨大な情報量の本作を、映画にまとめる際に大切にしたことは、と問われ「どうしても2時間の映画という性質上カットしてしまう場面が出てきます。それでも大切にしたかったのは、なるべく登場人物を削りたくないということです。それぞれ異なる人たちがその戦争の場にいたんだということを描きたかった。」と本作へのこだわりを明かします。

今回の映画を通して、これまでに抱いていた歴史に対する見方や認識などに変化などはあったかと問われた板垣は、「変わったというかアップデートされたような感覚です。」と述べ、「この作品にフィクションはあれど、ペリリュー島で悲惨な事実があった事は現実で、どうしたらいろいろな世代に届くんだろうと戦争に対して改めて考えさせられました。だからこの作品に関わること、全てが勉強でした。」と慎重に大切に言葉を選びながら語りました。普段の俳優業と全く異なるアフレコには苦戦した、と話す板垣。「普段見慣れている台本とは違うものなので『何だこれは?』と脳が処理できませんでした。普段は台本にマーキングはしないけれど、今回は自分のセリフとト書きにマーキングしました。台本という構造から根本から違かったのが大変でした。」と振り返ります。

更には「戦争をテーマにした本作に携わる上でどのような気持ちで挑んだか?」と聞かれると、板垣は「現地(ペリリュー島)に行って亡くなった兵士や戦った兵士に対して想いを馳せるところから始めました。アフレコ収録中もその思いみたいなものは絶対に絶やさずに、作品と向き合っていたいと思いました。そして戦争経験者が後世に残そうとしてきたものをいかに正しく伝聞していくか。そこも大事にしながら今もプロモーション活動を行っています。」と回答。これに板垣のアフレコ収録を見学したという武田は「変に作り込まず素の自分で、自分がその場にいたら?という素直な演技をしてくれた。それが本作の説得力になったと思います。」と賞嘆していました。
最後に板垣は「学生の発表を拝見して、また新たに知ることがありました。世代関係なく人としてお互いが人として知り合っていくことの大切さを改めて感じることができました。そして今から家に帰って“ただいま”と言える日々を大切に思う、この映画が幸せに生きていることが出来ている今を大切に思う一つのきっかけになってくれたら嬉しいです。今日は貴重で有意義な時間をありがとうございました。」と全体に呼び掛けながら感謝。最後には会場の全員をバックに写真を撮影し、大きな拍手に二人は見送られ、イベントは終了しました。